ポスティングのチラシから事業の実現可能性を探る
ポスティングのチラシから事業の実現可能性を探る
冷静に、多面的に考えれば、答えがすぐに分かることでも、目の前にお金がチラつくと、つい判断を誤ります。それほどやりたい訳でもないのに「楽して儲かりそうだから」という理由で事業を選ぶのは絶対に避けましょう。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
業務委託報酬は1枚配布につき2~5円。
今週新聞の折り込み広告で入っていたポスティングスタッフ募集のチラシです。
普段であれば、すぐに捨ててしまうところですが、あるクライアントさんとチラシを配る件で打合せした後だったこともあり、ちょっと調べてみることにしました。
チラシに記載されていた会社のホームページを見ると、その会社にポスティングを依頼する際には
1枚配布につき4.5~12円
の費用がかかることが分かりました。
この数字と先の業務委託報酬を勘案すると、このポスティング会社の場合、
1枚配布について2.5~7円
の限界利益が出ることが分かります。
価格については、配布する場所や配布物の種類によって、変わるようですが、仮に限界利益として
1枚配布について平均5円
儲かるとした場合、この会社では10万枚の配布物の案件を獲得できれば、
5円×100,000=500,000円
の利益が出ることになります。
その会社の場合、どのくらいの配布能力があるのかは、ホームページだけでは分かりませんでした。
けれども、東京都内全域をカバーしている別のポスティング会社では、「1日最大で20万枚まで配布できます!」とうたっていました。
もし、その会社のポスティングにおける限界利益が同じ「1枚配布について平均5円」であれば、20万枚の案件を獲得できれば、1日で
5円×200,000=1,000,000円
の利益を確保することができる計算になります。
もし、あなたの会社が新規事業を検討しているとしたら、このポスティング事業は魅力的に映るでしょうか?
仮に粗利として1日100万円稼げることが魅力的だとします。
しかし、これが成立するためには、まず、1枚配布して2~5円の収入を得ることで満足するスタッフを大量に確保することが必要になります。
私が手にしたチラシにも、「あいた時間でお仕事できます」「主婦・シニア活躍中!」というコピーがありました。
そして、もし大量にポスティング用のスタッフを確保できたとしても、そのスタッフの仕事振りをどう管理するのかという課題があります。
ポスティングを依頼する側に立ってみると、「依頼したチラシや販促物は本当にちゃんと配られるのか」が懸念材料の一つです。
この点、ポスティング会社によっては、スタッフにGPSを持たせて配布状況を管理する会社もあるようです。
一方で、スタッフを確保し、その管理もしっかりできる体制を整えたとしても、1日100万円の粗利を稼ぐには、会社として20万枚の案件を毎日獲得するというハードルが残ります。
営業が頑張って1日20万枚配る案件を獲得できたとしても、それをコンスタントに売上に結びつけるためには、配った先から、お客さんの売上につながる成果を一定期間に渡り出し続けることが求められます。
ポスティングを利用する会社も、費用対効果を考えるので、300万円かけたけれど、50万円しか契約に結びつかなかったとなれば、リピートしてくれません。
このように考えてみると、仮に粗利として1日100万円稼げることが魅力的だとしても、事業として、これを続けていくためにはいろいろとクリアすべき課題が多いことが分かります。
新しく事業を検討する場合、まずは
商品1個あたり、いくらの限界利益が得られるのかを把握する
ことが起点になります。
次に、
1個あたりの限界利益に個数をかけて、粗利を計算する
↓
その粗利ベースが会社として魅力的なのかを検証する
段階になります。
ここまでは、あくまで数字上の話ですが、この時点で
一定の利益を確保するために必要なノウハウや経験をどのくらいの期間で獲得できるか
をざっくりとでも見積る必要があります。
先のポスティング会社の事例で言えば、地域の状況に精通していて、「この種類のチラシをこの時期に配布すれば、〇〇%ぐらいの反響がある」ということがある程度分かっていないと、お客さんの信頼を得られません。
冷静に、多面的に考えれば、答えがすぐに分かることでも、目の前にお金がチラつくと、つい判断を誤ることがあります。
「簡単な仕事です!」「誰でもできます!!」「すぐに儲かります!!!」は、逆を返せば、参入障壁が低いということ。
心底やりたい仕事なら別ですが、それほどやりたい訳でもないのに「楽して儲かりそうだから」という理由で事業を選ぶのは絶対に避けましょう。
★後継社長が目の前の経営課題を解決しながら、新しい事業の基礎を築いていく仕組みは「こちら」をご覧ください。
★下記のフォームにお名前とメールアドレスをご登録いただければ、最新発行分より「超キャッシュフロー経営通信」【UCF】をお送りさせていただきます。ぜひご登録下さい。