資金繰り表とは
決算書より資金繰り表
銀行から借入するには
「いろいろ工面しているんですが、来月末の決済にはどうしても1,000万円ほど資金が足りません。」 「そうですか・・・。それで、ご返済は8月からですね。」 「はい。前回と同じように100万円ずつ10回の返済でなんとかお願いします。」 「でも、この資金繰り表によれば、また12月には500万円ぐらいお金が不足するんですよね?」 「最近他社との競争が厳しくなっているので、どうしても利幅が少なくなっていて・・・。」 「それで、この7月の受注というのは確実なんですか。」 「おそらく大丈夫だと思います。」 「前回の案件の際、審査部から申し送りがついています。まず、今後の受注予定先の一覧を出してもらえますか。」 「分りました。帰ってからすぐにファックスします。」
これは私が銀行員時代に融資担当者として融資の申込みのあった取引先と交わしていた会話です。
あなたも資金繰り表を見せながら、銀行の支店でこのような会話をされたご経験があるかもしれませんね。
資金繰り表の作成はちょっと面倒ですが・・・
銀行に融資を申込む際、決算書や試算表の他に必ずと言っていいほど提出を求められるのが資金繰り表です。
資金繰り表は資金管理を行うための代表的なもの。銀行員から提出を求められるため、面倒だと思いつつ、毎回作成されていることと思います。
決算書や試算表はある程度フォーマットが決まっているため、誰が作成しても出来上がりは一緒です。
決算書は顧問税理士にお任せという先もあるかと思いますが、自社で作成される場合であっても、最近は弥生会計を始め、非常に使い勝手の良い会計ソフトが普及したおかげで、昔に比べれば経理事務も大幅に省力化された感があります。
一方の資金繰り表。
帳簿を基に資金繰り表を作成しようと思っても少し面倒です。
今月の売上金500万円が来月末に振込で入金になるという場合、帳簿上では
- 今月の売上高の計上
- 来月の売上高の入金
という2回の取引が発生します。
利益や税金を計算する上で、大事なのは前者の
- 売上高の計上
ですが、資金繰りとしてポイントとなるのは後者の
- 売上高の入金
です。
このように会計とお金の動きには時間的なズレがあるため、資金繰り表の作成は慣れていないとちょっとやっかいかもしれませんね。
資金繰り表からスタート
私が最初に銀行に入ったのは今から約30年前。その頃見ていた資金繰り表は銀行所定の用紙に手書きで数字が書かれたものが大半でした。
おそらく銀行から提出するよう言われて電卓を叩きつつ、経営者や経理責任者の方が作成されたのだと思います。
(冒頭の会話も手書きベースの資金繰り表を見ながら交わしていたものです。)
その後、ITの発達により、優れた会計ソフトが数多く普及し、決算書の作成や毎月の試算表の作成は格段に簡単になりました。
資金繰り表も手書きからワープロへ、ワープロからエクセルへと進化し、見栄えは格段によくなり、表の縦と横の数字が合わないといった単純ミスも減りました。
しかし、この四半世紀で見た場合、これだけ会計ソフトが進化したのに比べると、資金繰り表の作成方法の歩みは驚くべきほど遅い・・・。
しかも、資金繰り表で使うのは、基本的には収入と支出の足し算、引き算の組合せにすぎないことを勘案すると、単に電卓での計算がエクセルでの計算に置き換わっただけなのかもしれません。
一方で、現実問題として多くの会社が資金繰り表の作り方のところで悩まれています。
資金繰り表の作成に関する本も数多く出版されていますが、問題解決には至っていないことが見受けられます。
会社にとって決算書の作成は管理部門の最大と仕事と言えるかもしれませんが、ある意味、日々の業務の中で、経営者にとってより大事なのは、決算書よりも資金繰り表。
本来資金繰り表は単に銀行に提出するために作る資料ではありません。
資金繰り表は
会社が自社の資金状況を把握し、経営者が必要な時に的確な手段を講じるために使う資料
なのです。
決算書はいわば過去の成績表。
もちろん過去の成績が悪いと、資金調達の時に不利になる、会社の信用を落とすといった問題はあります。
しかし、決算を締めた時点から現在、そして将来に向けて成績の改善傾向が見られるなら充分に挽回は可能です。
一方で、いくら数ヶ月前の成績表が良くても、手元のお金がきちんと回っていなければ、会社は事業を続けていくことができません。
そして、そのお金の動きをチェックするのが資金繰り表です。
会社の数字と言えば、まず決算書に目が行きます。でも、会社を続けていくという観点から注目すべきは資金繰り表。
資金繰り表を作ることが当たり前の世の中になれば、会社の倒産はもっと減るのではと私は考えています。
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Tag: 資金繰り表 決算書 キャッシュフロー経営