資金繰り表のポイント
資金繰り表のポイント
資金繰り表を作るにあたって、つまずくポイントは、勘定科目の理解、利益とキャッシュとの違い、計上時期とのタイミングのずれの3つ。けれども、資金繰り表は作ることより、使うことが大切。資金繰り表作成にかける時間は必要最小限に留めましょう。
資金繰り表とおこづかい帳は同じ?
あなたは子供の頃いわゆるおこづかい帳をつけられた事はあるでしょうか。
私は小学校4年生まで和歌山との県境に近い大阪の田舎に住んでいました。
たしか小学校の2年生か3年生の時だったと思いますが、最寄りの駅に初めて銀行の支店ができました。
その時、頒布品としてもらったのがおこづかい帳。
それ以来小学生の間はおこづかい帳をつけていた記憶があります。
おこづかい帳は
・昨日の残高:A
・入金:B
・出金:C
・今日の残高:D
があってA+B-Cを計算することで、今日の残高Dが分るようになっています。
そして、今月末の残高がまた翌月初めの残高となって次の月に続いていくという訳です。
入金のところは毎月もらうおこづかいや年1回のお年玉が中心。
親戚の人が遊びに来た時にはちょっと臨時収入もあるかもしれません。
出金の項目にはマンガやお菓子が並びます。
ちょっと高価なおもちゃを買うために2~3ヶ月頑張ってお金を貯めたという思い出のある方も多いのではないでしょうか。
資金繰り表もいろいろな項目が書かれていますが、
構造的にはおこづかい帳とほとんど同じ
です。
入金は主に毎月の売上、出金は原材料の仕入れや従業員の給料、事務所の家賃などなど。
おこづかい帳に比べて種類も多く、やや複雑かもしれませんが、
毎月D=A+B-Cの足し算、引き算を繰り返している
ことに変わりはありません。
では、小学生がつけているおこづかい帳と本質的な部分ではさほど変わらない資金繰り表を作ろうとする際、多くの人が悩んだり、困ったりしているのはなぜでしょうか?
資金繰り表作成にあたって、最初につまずくポイントは3つあります。
- 勘定科目の理解
- 利益とキャッシュとの違い
- 計上時期とのタイミングのずれ
勘定科目の理解
まず、最初の勘定科目の理解の部分です。
売上高、当期利益、預金、商品、借入金ぐらいは問題なくても、売掛金や買掛金、未払金や未収金ぐらいになると、少しづつ怪しくなってきます。
ましてや、
・交際費と会議費の違いは何か
・昨日の支出はどっちに計上すべきなのか
といった問題になってくると、正確に答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。
先の売掛金と買掛金、未払金や未収金というペアで考えると、比較的理解しやすいかもしれません。
しかし、「売掛金と未収金、買掛金と未払金の違いは?」となると、答えに窮するかもしれませんね。
これら勘定科目の違いは経理担当者や税理士の先生にとっては大きな違いとなり、厳密に区別すべきとなるかもしれません。
けれども、
経営者が資金繰りを見る上ではさほど神経質にならなくても良い
というケースが多いのです。
交際費として2万円使おうが、会議費として2万円使おうが、会社から出ていくお金は同じ2万円です。
もちろん、決算で課税所得を計算する際には交際費と会議費の違いは考慮すべきですが、昨日使った2万円はキャッシュフローとしては昨日時点で同じ、「-2万円」です。
従来、資金繰り表を作る際にどうしても制度会計である決算、決算業務や税務申告を行うための仕訳をベースにスタートするために、かえって複雑で分りにくくなっているところがあります。
先の交際費と会議費の違いや、売掛金と未収金との違いのように、大きな資金繰りとして見た場合、
あまり大差のないものを同じグループとして考えると、資金繰り表をはもっと簡単に作れる
はずです。
利益とキャッシュの違い
次に利益とキャッシュとの違いがあります。
従来の会計は利益およびそれに伴う税金を中心に考えてきたため、
・いかにして利益を上げるか
または、
・(節税のために)利益をいかに抑えるか
を重視してきました。
例えば、500万円の工作機械を購入した場合、資金繰りとしては「-500万円」です。
一方、会計としては年間の減価償却費を50万円とすると、
・費用(減価償却費)=50万円
・固定資産=450万円(=500万円-50万円)
となります。
したがって、決算上の数字だけ見ていると、実際には会社から500万円のお金が出ていっているのに、50万円だけの出費で済んだように錯覚しがちです。
また、300万円の原材料を使って商品を100個作ったとします。
期初の在庫を0個、期中に70個売れて、期末に30個の在庫が残ったとします。
すると、300万円は、
・費用(売上原価)=210万円(=300万円×70/100)
・資産(商品)=90万円(=300万円×30/100)
となります。
この場合、会社から原材料費として300万円支出されているにも関わらず、費用として計上されるのはその一部に留まっています。
このように会社の売上や費用、およびそれに伴う結果としての利益とキャッシュとの間にはどうしてもギャップが生れます。
このあたり、経理や会計に詳しい人であれば、なんてことのないことなのかもしれません。
けれども、経理はちょっと苦手という方にとっては、試算表や、損益計算書・貸借対照表をもとに資金繰り表を作れと言っても、少し時間がかかるかもしれませんね。
しかし、いずれにしても、
資金繰りの場合、あくまで大事なのはキャッシュ
です。
工作機械のケースで言えば、手元に450万円の現金があるのと、450万円で計上されている機械があるのでは大きな違いです。
現金や預金の場合、使おうと思えばすぐに使えます。
しかし、機械の場合、もちろん商品を製造するという大変重要な役目があるものの、それを換金して使うことはけっして簡単なことではありません。
したがって、その機械が生み出す商品が会社の収益に貢献できるかどうかがポイントになってきます。
商品(在庫)の場合も同じような問題があります。
在庫と費用との関係で言うと、同じ300万円を使って商品を作っても、商品が売れずに在庫として売れ残れば残るほど、(費用が少なくなって、)表面的には利益が上がるという一種のゆがみが生じています。
したがって、商品を作って利益が出て一安心と思っていざ蓋を開けてみると、実は不良在庫が山のようにあり、その後の資金繰りは・・・という事態にならないよう充分に注意が必要です。
計上時期とのタイミングのずれ
3番目に、計上時期と入金や支払とのタイミングのずれの問題があります。
この問題は一般に市販されている会計ソフトではなかなか対応しきれない点であり、資金繰りを把握していく上でも絶対に外せないポイントです。
各会社ではそれぞれ売上や収益の目標があります。
今月の目標に対して、売上で500万円が足りないとか、外注費があと100万円安くなれば利益が出るということで、皆様も日々努力されていることと思います。
そして、月末ギリギリになって、600万円の受注が取れたため、今月はめでたく、売上の目標を達成したとしましょう。
会社としては予算以上の数字をあげたため、◎です。
では、この事例を資金繰りの観点から見た場合はどうでしょうか。
仮に営業担当者が目標を達成するために、先方の提示を呑んで売上の支払は6ヶ月後という条件で受注したとします。
すなわち、会社にお金が入ってくるのは半年後という訳です。
ここで話を簡単にするために、600万円は会社の期末に全額利益として計上できたものとし、この600万円の案件以外の収支はプラスマイナス0とします。
すなわち、この会社の税引き前利益は600万円になります。
税率を40%とすると、この会社は期末から2ヶ月以内に、税金240万円(=600万円×40%)を支払わなければなりません。
一方、600万円が入ってくるのは6ヶ月後。
したがって、資金繰り的に見た場合は支出が先行するため、会社としては何らかの形で資金手当てをする必要が出てくるのです。
もちろん、手元に240万円以上のお金があり全く問題ないという会社も多いと思います。
しかし、私が今まで1,000社以上の資金繰りを見てきた経験からすると、このあたりの資金繰りは意外と盲点になっています。
決算の数字が固まり、顧問税理士から納税額を聞いて、慌てて資金繰りに駆けずり回ったというご経験のある方もおられるのではないでしょうか。
前述のケースは話を非常に単純化するため、税金の問題を取り上げました。
けれども、実際には600万円の売上を上げるために原材料を購入したり、製造費用がかかったりするため、いろいろと支払が先行して発生します。
したがって、せっかく社員が頑張って売上を上げたのに、入金や支払のタイミングをきちんと把握していないと、結果的にお金が足りなくなって頑張った社員の給料が払えなくなるというように笑うに笑えない事態が起こってしまう恐れもあるのです。
つまり、会計上は同じ売掛金600万円であっても、その
入金日が1ヶ月後なのか、6ヶ月後なのかでは資金繰りとしては雲泥の差
があります。
この部分は資金繰りを考える上できちんと把握してしっかり対応すべきポイントです。
社長や経理担当者だけでなく営業担当者や技術部門も含めた全社員が意識を持って取組むかどうかによって資金繰りは大きく変わってくるのです。
苦手克服のための対応策
これら資金繰り表で最初につまずくポイントを克服するにはどうすれば良いでしょうか。
対応策としては、大きく分けて次の3つがあります。
①やはり面倒なので資金繰り表の作成は諦める。
②税理士の先生などにお願いして作成してもらう。
③本を読んだり、セミナーに参加したりして資金繰り表についてもう少し勉強する。
手元の資金に余裕があって当面資金繰りに問題ない場合は①の選択肢もありです。
しかし、このサイトをご覧いただいているあなたは資金繰り表に何がしかの関心をお持ちの方が大半だと思いますので、①についてはここでは除外とさせていただきます。
次に税理士などいわゆる外部の方にお願いして作成してもらうケースです。
もし、社内に経理や財務の専任スタッフがいない、取引件数がさほど多くない、といった場合はそれもありです。
この場合、外部に委託する費用との兼合いになるかと思います。
実際、当社でも顧問契約サービスの中で一部のクライアントに対しては毎月当社で資金繰り表の作成を代行しています。
では、最後の自社でなんとか資金繰り表の作成をやろうとする場合です。
「習うより慣れろ」ではありませんが、いろいろと試行錯誤を重ねながら進めていくのが結果的には早道です。
しかし、
会社にとって大事なのは資金繰り表を作ることではなく、資金繰り表の数字を分析し、必要な対策をすばやく的確に打つこと
です。
したがって、できれば資金繰り表作成にかける時間は必要最小限に留めるべきなのです。
資金繰り表は作ることより、使うことが大切。
資金繰り表作成でつまずくポイントを克服し、資金繰りの把握と資金繰り改善に注力する時間を捻出するためにお気軽に弊社にご相談いただければ嬉しく思います。
ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井 徹朗
★資金繰り表でつまづくポイントは理解できた、もしくは、そんな事は既に分かっているという方は「こちら」もご覧ください。
キャッシュフロー経営の実践チェックリスト100
★「キャッシュフロー経営の実践チェックリスト100」は「こちら」をご覧下さい。
★下記のフォームにお名前とメールアドレスをご登録いただければ、最新発行分より「超キャッシュフロー経営通信」【UCF】をお送りさせていただきます。ぜひご登録下さい。