育てた社員の退職が続いても、35年会社経営を続けた経営者の胆力
育てた社員の退職が続いても、35年会社経営を続けた経営者の胆力
どんなに経営者が社員のためと思っても、それを100%社員が理解することはありません。それゆえ、経営者の期待を裏切るようなことが起きた時に、経営者本人が自分の中で、どう折り合いをつけるかが会社経営では一つの分岐点になります。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
一生懸命育てて、ようやく仕事も一人前にできるようになったと期待していた社員が退職してしまう。
経営者としては、たいへんがっかりしてしまう出来事です。
今年で起業して35年になるベテラン経営者のN会長も、何回も同じ目にあったそうです。
N会長の会社はソフトウェア開発会社。業種柄転職者が多い傾向にあります。
ソフトウェア開発であれば、即戦力としては、コンピュータにも詳しい理系の人を採用するのが普通です。
しかし、設立間もない中小企業だと、なかなか理想となるような人は応募してくれません。
このため、N会長は起業当初から、コンピュータの知識がゼロという人を採用し、イロハのイから教えてなんとか仕事ができるように育てました。
けれども、残念ながら「ようやく一人前になったかなぁ」と思っていると、より給料の高い会社や、より良い待遇を求めて、転職してしまう人が後を絶たなかったそうです。
普通の経営者であれば、ここで凹んでしまうもの。
しかし、N会長は「これも一つの社会貢献だ!」と割り切って、採用しては人を育てる取り組みを続けられました。
すると、中には会社に残って幹部社員として活躍する人が徐々に増えてきました。
そして、今年になって、生え抜きの社員に社長を譲り、経営の大半を後任社長に任せる形で会長に就任されたのです。
会社経営の観点から言えば、お金と時間と手間をかけて採用し、入社後も、お金と時間と手間をかけて育てた社員が社外に流出してしまうのは、どうしても避けたいところ。
このため、多くの会社は「離職率をどうやって減らすか」に知恵を絞っています。
しかしながら、どんなに会社が努力しても、退職してしまう人をゼロにすることはできません。
N会長のお話をお聞きした後、後任社長ともお話させていただいたのですが、「N会長は社員に機会を与えようと常に意識されている」けれども、「中には、そのことに気がつかずに転職してしまう人がいる」とのこと。
また、「ウチは福利厚生面でもかなり優遇されていると思う」けれども、「新入社員で入社して、ウチしか知らないと、その厚遇条件を当たり前と思い、『もっと〇〇してほしい』と要求する社員もいる」そうです。
どんなに経営者が会社のため、社員のため、と思っていても、それをそのまま100%社員が理解することはありません。
それゆえ、
経営者の期待を裏切るようなことが起きた時に、経営者本人が自分の中で、どう折り合いをつけるか
が分かれ目になります。
もし、N会長が育てた社員の退職が続いた時に、「もう、社員を教育するのなんて止めた!」と判断していたら、今の後継社長が経営者として育つことはありませんでした。
また、会社も35年以上続くことはなかったと思います。
今年、御年70歳になるベテラン経営者のお話を伺って、会社は経営者の器以上には大きくならないと改めて感じました。
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