取引先の社長に叱られました
取引先の社長に叱られました
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「岩井さん、書類がまだ行ってないようだけど、どうなってるの?」
ある建築事務所の社長からの電話です。
私が銀行の支店で働いていた時、毎月のようにお金を借りに来られる会社がありました。
社長は一級建築士で腕のいい職人なのですが、いかんせん資金繰りが厳しい・・・。
このため、借りては返し、また借りるといういわゆる金繰り償還の典型でした。
返済が一時的に進んだので、信用保証協会の枠が空き、銀行に保証協会付きの新規借入申込がありました。
先に審査してもらうため、書類を銀行経由で保証協会に出します。
しかし、他の案件で忙しかったため、私は1~2日ほど書類を手元に置いていました。
先の社長は、保証協会に自ら電話し、自分の会社の書類がまだ提出されていないことを確認。
そこで、冒頭の電話が私のところにかかって来たのです。
お金が足りなくなるのは月末。
金額も小さいため、支店長が決裁ができる融資案件です。
このため、私もまだ充分に時間があると考え、他の急ぎの案件に取組んでいました。
しかし、資金繰りが心配な社長は書類がまだ保証協会に行っていないことで不安になり、私に督促の電話をかけてきたのです。
銀行の一担当者からすると、うるさい取引先です。
しかも、資金繰りが厳しいため、毎月申請書を書かなければなりません。
このため、手間ばかりかかる割には、社内的にはあまり評価されない先です。
そこで、電話をもらった時も、口では「申し訳ありません。すぐに書類を出します」と言いつつ、心の中では「文句ばかりでうるさいなあ」と正直思っていました。
けれども、銀行を離れて、小さな会社の一経営者になってみると、建築会社の社長の気持ちがよく分かります。
社長は、資金繰りを回すのに必死だったのです。
私を電話口で叱りつけた社長の会社。
私が担当している間はどうにか、こうにか資金繰りが回っていました。
しかし、私が他の部署に転勤してからしばらくして、その会社は不渡りを出し、残念ながら倒産してしまったそうです。
20年近く前の担当先ですが、今でも時々思い出す取引先の中の1社です。
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