銀行借入とビジネスについて
銀行借入とビジネスについて
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「今月会社を設立しました」
という方と先週末にお話する機会がありました。
ご商売はサプリ関連の販売。
サプリの場合、薬事法とのからみで使ってよい表現がいろいろと制限されています。
このため、現在作成中のホームページの文言をどうするか、いろいろと頭をひねっているというお話でした。
ある起業家の気になる発言
さて、その起業家の方とのお話の中、気になったご発言が一つありました。
それは、
「借入した方が実績ができていいんですよね」
というもの。
どうも、別の方から「銀行から借入したという実績を作っておいた方がのちのち有利である」というアドバイスを受けた模様です。
あなたはどのように思われるでしょうか。
最初から借入してビジネスを始めた方が良いのかどうか。
もちろん、正解は一つではありません。
そして、私も実際には相手先によってアドバイスする内容を変えています。
そこで、
銀行借入とビジネス
について考えてみたいと思います。
借入の実績とは
新たに中途社員を採用する時、「経理の経験者優遇」「営業経験5年以上が望ましい」といった条件をつける時があります。
まったくの未経験者よりも、多少なりとも経験や実績があった方が望ましいという訳です。
では、借入の場合はどうでしょうか。
銀行員の立場からすれば、まったくの新規先よりも一度でも貸出した先の方が何かとやりやすいのは事実です。
いくら決算の財務状況が良くても、新規先に対して貸したお金が本当に返ってくるかどうかはあくまで未知数です。
このため、一度貸したお金がきちんと返済されたという実績はプラスの評価です。
この点、会社を設立したばかりの人に、「銀行から借入したという実績を作っておいた方がのちのち有利である」というアドバイスをした人はある意味正しいと言えます。
しかし、問題はお金の返し方。
前職の際、会社では5,000万円を借りて3ヵ月で返したという「実績」があります。
けれども、実情を明かせば、
まだ売上がさほど上がっていない
↓
3ヵ月で5,000万円を返せる状況ではない
↓
結局、借りたお金は手をつけずに金利だけ払って返済した
という「実績」です(苦笑)。
このような実績は銀行からすれば、「どうかなあと心配だったけれど、取りあえずきちんと返済されて 正直ほっとした・・・」という程度の評価で、次の貸出へとつながるものではありません。
一方で、
お金を借りて、それを有効に使い、かつ、きちんとお金を返した
ということであれば、次のステップにつながります。
要は
- 借りる前の準備がどこまでできているか
- 借りた後の行動がどこまでできるか
によって
借入することがプラスの実績にもなればマイナスの実績にもなる
ということです。
借入する前の準備
さて、借入する前の準備と言えば、
- 決算書や試算表を揃える
- 資金繰り表や事業計画を作る
といったように、お金を借りるための準備がいろいろ必要になります。
銀行と交渉し、めでたく「1,000万円の融資が決まった!」ということでほっと一息されたご経験をお持ちかもしれませんね。
しかし、現実問題としては、
借入日=返済がスタートする日
です。
つまり、借入したその日から返済に向けたカウントダウンが始まっています。
そこで、借入する前の準備としては、お金を借りるための準備に加えて、お金を返すための準備が必要になります。
そして、このお金を返すための準備は思った以上に疎かにされています。
お金を返すための準備
昨年新築マンションを買った友人。
期間30年の住宅ローンを借りたので、最終返済日は80歳近く!
70代後半になっても毎月借金を返すというのは、ちょっとイメージしづらいですね。
住宅ローンの場合、毎月の返済額を減らすために期間を長めに設定するけれども、実際には多くの場合、退職金等で繰り上げ返済するのを前提にしています。
つまり、住宅ローンのケースで言うと
- 最初に頭金が必要(最低2割ぐらいの頭金を用意しておいたほうがベター)
であることに加え、
- 最後に返済原資がある程度確保されている
ため、銀行としては比較的審査が通りやすい融資の一つです。
では、会社の一般的な借入の場合はどうでしょうか。
最初に少しは自己資金が必要という点では住宅ローンと同じです。
しかし、個人の退職金のように、ある程度まとまったお金がかなり高い確率で入ってくるということは必ずしも期待できません。
普通は売上から上がった利益で借入金を返済していく訳ですが、昨今の状況を考えると、計画通りに売上が上がらないことは充分にありえます。
そして、計画通り行かないことが分かってから動くのでは遅いのが現実。
このため、お金を返すための準備として、
計画通りに売上が上がらない場合どうするのかについて3つぐらいの対策を事前に検討しておく
が大切になります。
- 社長が個人で貸付ける
- 手元にある株を売却する
- 定期預金を取り崩す
などなど、対策は様々です。
しかし、これらの対策を借入する前にピックアップしておけば、
「500万円ぐらいなら最悪でもなんとかなりそうだ」
とか、
「本当は3,000万円借りたいけど、ちょっと厳しいかなあ・・・」
ということがおおよそ見当がつきます。
そして、この感覚というのはかなり大事です。
住宅ローンの場合だと
「まあ、退職金で2,000万円ぐらいはもらえそうだから、65歳で完済できそう」
というような、感覚はあると思います。
借入金を借りる側がこれならなんとかなりそうだという感覚がないままとりあえず借りて、
借りてからなんとかするという考え方は危険
です。
備えあってこその銀行借入
銀行借入を有効活用することで、ビジネスはより早く進んでいきます。
しかし、それも事前の準備をしっかりしてこそという前提条件が付きます。
行きあたりばったりで
「お金が足りないからとりあえず借りてしまおう」
というのは、将来的にビジネスの足かせになります。
備えあれば憂いなしです。
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Tag: 銀行借入 融資 お金を返す準備 住宅ローン 事前の準備