理想が高く、まじめな社長ほど行動しない?
理想が高く、まじめな社長ほど行動しない?
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「最後はやはり材料費のところですね。」
「う~ん、分かりました・・・。」
そして、2週間後、スカイプを使って進捗状況を確認したところ、こちらから提案したほとんどの項目は既に実行済みだったのですが、肝心かなめの材料費だけは手付かずの状態だったのです。
これは、ある飲食業者さん向けにコンサルティングを行っていた時のことです。
社長が自分の故郷の名物を別の地域にも広めたいという想いで始められたお店。
しかし、なかなか当初の計画通りには進まず、弊社に資金繰り改善のご相談がありました。
ご連絡いただいた時には既に銀行とリスケの交渉を進めておられ、人件費の削減などやるべ手立てもほとんど着手済みでした。
そこで、私の方では、決算書や試算表等の資料を拝見し、
- 社長が気づいておられなかった経費削減方法
- 売上を上げるためのポイント
- 今後の資金繰りを予想する上で注意すべき点
などをいくつかご提案したのです。
その中で、私が一番気になったのは材料費でした。
社長は「お客さんには最高のものを食べてほしい」という気持ちから、主力商品の原材料に最高級品を使っていました。
しかし、分析してみると、そのお店の平均客単価は約700円。
お昼にワンコインランチを始めると、たちまち一番人気になったというマーケットで、メニューの値上げは現実的ではありません。
このため、割高な材料費が会社の資金繰りに大きく影響していたのです。
例えて言えば、「吉野家でも松坂牛の牛丼を!」と頑張っている状態でした。
この点を私の方では、具体的な数字を使ってご説明したのですが、社長は、表面的には「分かった」とおっしゃったものの、おそらく心の中では、「岩井さん、そうは言っても自分がやりたいのは・・・」ということで、腹に落ちていなかったのです。
当たり前ですが、人は心底納得しない限りなかなか行動しません。
特に自分の理想をまじめに追求する人ほど、いくら数字的な根拠を示しても、今までのやり方を変えるのは難しい・・・。
そして、結局はどうなったか。
しばらくしてから、社長は私も面識のある飲食業の専門家に相談。
今使っている材料で作った商品ともう少し安い材料で作った商品を実際に食べ比べてみました。
その結果、味にほとんど差がないことが分かり、ようやく材料を切り替えたのです。
この間、最初にご提案してから、実際に原材料費の削減効果が出るまで3ヵ月ほどかかりました。
もちろん、飲食業にとって、原材料に手を入れることは慎重に行う必要があります。
しかし、このお店の場合、仮に材料を変えても、それに気づくお客さんは100人に1人いるかどうかという状況でした。
それを社長に納得してもらい、実際に行動していただくには
「数字」という直球だけでは力不足
というのを学んだケースです。
次回は、最近ある方から教えてもらった実際に行動を起こしてもらうための裏技をご紹介したいと思います。
それにしても、最近は不況のせいか、極端に味が落ちる店が多いと思うのは私だけでしょうか?
ランチ時の選択肢がだんだん少なくなっています(汗)。
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