会社の数字の見方を知る
会社の数字の見方を知る
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
同じ数字を見ていてもある見方や考え方を知ることで、今までにない発想を思いついたり、新しい問題解決方法が見つかる可能性があります。
そこで、今回は、
銀行員などお金の出し手が会社の数字のどこに着目するか
についてお話したいと思います。
純資産を最初にチェック
現在、弊社は、貸金業としてお金をご融資することや、投資家として他社に出資することは事業としてやっていません。
ただし、長年銀行員として、数多くの会社の財務を見てきた“癖”として会社の決算書をもらうと、まず最初に目がいく箇所があります。
それは、
貸借対照表の「純資産」
です。
一言で言えば、純資産とは、
株主が出したお金と会社の儲け(損)の合計
です。
そこで、
- 純資産がプラスかマイナスか
- プラスの場合、いくらプラスなのか
- マイナスの場合、いくらマイナスなのか
を見る訳です。
以前は株式会社を作る際に最低でも資本金が1,000万円必要でした。
このため、ざっくりと言えば、累計で会社の赤字が1,000万円未満なら純資産はプラスです。
しかし、今は資本金1円から会社を設立できる時代。
この点、昔に比べると、誰でも気軽に会社を設立できるようになりました。
けれども、資本金が少ないとちょっと赤字を出しただけで、すぐに純資産がマイナスになってしまいます。
すると、銀行員は「御社は債務超過ですね・・・」と言って、なかなかお金を貸してくれません。
純資産がマイナスになってもそれだけで会社が倒産する訳ではありません。
ただし、もしお金が必要になって、銀行からの借入や投資家からの出資を受けて足りないお金を調達しようと考えた場合、
純資産がマイナスであることは資金調達で圧倒的に不利な状況にある
のです。
この点は既に何年も企業経営に携わっておられるベテランの経営者の方は既にご存知のことと思います。
一方で、比較的小資本で事業を始められて、1~2期目でなかなか黒字にならず、純資産がマイナスになって、次の資金調達にご苦労されている経営者の方が多いのも事実です。
貸借対照表の数字は、決算時点でのいわば「スポット」の数字。
しかし、純資産の数字には、
- 会社が過去どのくらい儲けてきたか
- 株主がどのくらい本気で事業にお金をつぎこんできたか
という「会社の歴史」が反映されています。
このため、なかなかごまかしが効きません。
概念的には少し分かりづらい純資産ですが、
会社の数字の中では、最初に「純資産」を見られることが多い
ということは覚えておいていただければと思います。
借入金で縦のバランスを見る
では、次に何を見るか。
やはり、お金を出す側として気になるのは、「借入金」です。
貸借対照表では、
- 1年以内に返済する「短期借入金」
- 返済期限まで1年超ある「長期借入金」
の二つに分かれて記載されています。
そこで、この2つの数字を合計し、会社にはいくらの借金があるのかを頭に入れる訳です。
ただし、単純に借入金額の大小だけでは判断できません。
例えば、借入金=3,000万円あったとします。
年商3億円の企業であれば、3,000万円の借入金もまず問題ないと言えます。
しかし、年商5,000万円の企業の場合、3,000万円の借入金があると、「もう少しよく見てみよう」という気持ちになります。
そこで、次に損益計算書の「売上高」を見て、借入金÷売上高をざっと計算するのです。
つまり、一連の動きを整理すると、
短期借入金と長期借入金の金額を見る
↓
両者を合計する
↓
合計した借入金の金額を売上高で割る
というのが、純資産を見た後で私がやる作業になります。
貸借対照表は別名「バランスシート」。
これは、左側の「資産」と右側の「負債+純資産(資本)」の金額が一致することから、その名前がついています。
一方で、借入金の金額を確認するという作業は、
負債と純資産のバランスを見る
ということです。
どんな、会社でも、資産=負債+純資産となります。
つまり、「横のバランス」は常にとれています。
しかし、会社によって、負債と純資産(資本)の割合(バランスの仕方)は様々です。
貸借対照表では、負債→純資産の順番に数字が並びます。
つまり、負債が大きいということは、それだけ、頭でっかちということ。
頭でっかちだと、どうしても「バランス」が悪くなります。
そして、借入金÷売上高の数字が大きいと、たいていの場合、負債が大きくてバランスの悪い貸借対照表になっています。
お金を出す側は縦のバランスも重視します。
資産を見て負の遺産をチェック
次に、どこに注目するかですが、私の場合、どうしても貸借対照表の左側
「資産」
のところに目がいきます。
資産のところには
現金・預金、売掛金、商品、土地、建物、投資有価証券・・・
といった項目が並びます。
要は、資産は会社の持ち物リストです。
もちろん、
- 流動比率がどうか
- 売掛金が膨らんでいないか
- どのくらいの不動産を所有しているのか
といったことも確認します。
しかし、決算書をパット見た時に気になるのは、やはり、「これはな~に?」という項目です。
先に上げた預金、商品、土地などはそれが何であるかは容易に想像できます。
一方、
- 仮払金
- 貸付金
- 繰延資産
といった項目はそれだけではすぐに内容が分かりません。
例えば、銀行など金融機関であれば、持ち物リストである資産の部に貸付金があるのは理解できます。
しかし、一般事業会社の場合は貸付するのが本業ではありません。
そこで、この貸付金は
- 社長への貸付金なのか
- 関係会社への貸付金なのか
- なぜ貸しているのか
というのが気になってきます。
もちろん、これらの項目も会社の規模と比較して金額が小さければ、ある程度無視できます。
しかし、時々あるのが、
仮払金や貸付金がかなり膨らんでいて不良資産になっている
というケースです。
つまり、
会社の負の遺産が説明のつきにくい資産の中に集約されていることもある
という訳です。
通常のビジネスの中で生じる仮払金や貸付金もあるかと思います。
しかし、お金の出し手は高校の担任の先生のように持ち物検査をする立場にあります。
検査を受けても、「この持ち物は全く問題ありません!」と言い切れるかどうか。
一瞬見ただけで何か分からないものはきちんと相手に説明し、納得してもらえないと、
持ち物から取り上げられる
↓
資産から除いて評価される
↓
場合によっては実質債務超過として判断される
こともありえるので、要注意。
いつ持ち物検査があっても常に堂々とした態度で検査に臨める状態
でありたいですね。
経営課題の解決へ
純資産、借入金、不良資産。
もちろん、これ以外にも銀行員がチェックする項目はたくさんあります。
けれども、これらの項目で何か問題があると、融資の審査がなかなか先に進まないのも事実です。
そして、貸借対照表に載っている
純資産、短期借入金、長期借入金、仮払金、貸付金
などは、1期だけの数字というよりは、長年の会社経営の結果として出てきたものであるため、経営課題が如実に反映されています。
- 売上ばかり追いかけて赤字が続いていた
- お金が足りないとすぐに銀行借入に頼った
- 会社のお金と経営者の財布がいっしょくただった
何か思い当たるふしはないでしょうか。
いろいろな経営指標を見る前に、まず
純資産、借入金、不良資産
を経営者自ら検証してみましょう。
利益率を上げる、流動比率を改善する前にまず真正面から向かい合う数字です。
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